第4章 雄英体育祭編
間髪入れず、爆豪は爆発を叩き込んでくる。
考える隙すら与えない。
爆豪は、彼女に戦況を分析する時間を与えないつもりだった。
――短期決戦。
それと同時に、彼女に個性を使わせる。
おそらく、そんな算段だ。
「……そう来るか」
彼女は迫りくる爆発を見据え、静かに息を吐いた。
このままでは押し切られる。
ならば――腹を括るしかない。
「……不可侵領域」
彼女を中心に、空間が歪んだ。
爆豪の掌から放たれた爆発が、彼女の目前で掻き消える。
轟音が止んだ。
観客席から、どよめきが広がる。
「……は?」
爆豪の目が、大きく見開かれた。
自分の個性が――使えない。
「これが……こいつの個性か!!」
初めて見る。
これまで彼女が隠し続けてきた力。
その正体を、爆豪は目の前で思い知らされていた。
会場の熱気は、一気に頂点へ達する。
だが、彼女の表情は、僅かに曇っていた。
不可侵領域を維持しすぎた。
身体の奥から、鈍い痛みが這い上がってくる。
指先が震えた。
呼吸が浅くなる。
――まずい。
そう思った瞬間だった。
「隙ィ見せんなァ!!」
爆豪が踏み込む。
彼女の反応が、一瞬遅れた。
「――!」
最大出力の爆発が真正面から炸裂した。
轟音とともに、スタジアム全体が揺れる。
爆炎が広がり、煙幕が盤上を覆い尽くした。
観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。
やがて、徐々に煙が晴れていく。
そこに広がっていたのは、見る影もなく荒れ果てたスタジアムだった。
砕けた床。焼け焦げた地面。立ち込める煙。
そして、その中央に――。
彼女が倒れていた。
長い髪が地面に広がり、額から流れた血が頬を伝っている。
「……!」
一瞬、会場が静まり返った。
次いで、実況の声が響く。
『勝者――爆豪勝己!!』
歓声が爆発した。
だが、彼女にはその声すら遠かった。
――負けた。
そんなことは、どうでもいい。
身体を起こそうとした瞬間、視界が大きく揺れる。
「……っ」
医療班が駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!? すぐに処置を――」
伸ばされた手。
彼女は反射的に、その腕を振り払った。
「私に……触らないで!」