第4章 雄英体育祭編
出張保健所を出た彼女は、ゆっくりと会場へ向かっていた。
先ほどまで椅子に座り、目を閉じて休んでいた。
リカバリーガールとオールマイトの前では、いつも通りを装っていた。
「大丈夫です」
そう笑っていた。
けれど――。
「……思ったより、残ってるな」
足元が、ふわふわする。
まるで地面が僅かに揺れているような感覚。
胸の奥では、心臓が普段より速く脈打っていた。
緑谷の身体に干渉した時。
骨、筋肉、血液。
細胞単位まで意識を向けた。
その負荷が、今になって身体へ押し寄せてきている。
彼女は壁に手をつき、一度だけ深く息を吐いた。
「……万全じゃない、か」
それでも、足を止めるつもりはなかった。
この先に待っているのは――爆豪勝己。
ここまで勝ち上がってきた以上、手を抜くことはできない。
きっと、あの男は怒る。
『舐めてんのか』
そう言われるのが目に浮かぶ。
彼女は小さく笑った。
「……できるところまで、やろう」
無理はしない。
けれど、逃げもしない。
それが今の自分にできる、精一杯だった。