第4章 雄英体育祭編
「このことがヴィランに知られたら、あんたは真っ先に狙われるよ。敵を制圧できるうえに、傷ついた仲間まで治せる。そんな個性を放っておく連中じゃない」
彼女は答えなかった。
その沈黙が、何よりも雄弁だった。
オールマイトは、眠る緑谷を一瞥してから、彼女の肩に手を置いた。
「……もう、自分だけで抱え込まないでくれ」
いつになく真剣な声音だった。
「君の力がどれほどのものなのか、私にも分からない。だからこそ、君自身を危険にさらしてほしくないんだ」
彼女は微かに笑った。
「……善処します」
「その返事は信用できないね」
リカバリーガールが即座に切り捨てた。
彼女は苦笑する。
けれど、指先にはまだ小さな震えが残っていた。まぶたも重い。身体への干渉は、思っていた以上に負担が大きかったらしい。
リカバリーガールはそれを見逃さず、彼女を椅子に座らせた。
「次の試合まで、休んでな!!」
「……はい」
素直に従いながら、彼女は眠る緑谷を見つめた。
少年は何も知らず、穏やかな寝息を立てている。
この力がどこまで届くのか。
何を救えて、何を壊してしまうのか。
その答えは、彼女自身にも分からない。
ただ一つ確かなのは――
この個性の全貌をヴィランが知れば、彼女はもはや、ただの雄英生徒ではいられなくなるということだった。