第4章 雄英体育祭編
「……私にも、手伝わせてもらえませんか」
リカバリーガールとオールマイトが、同時に振り向いた。
「手伝うって、あんた……」
「私の個性で、身体の損傷を回復させられるかもしれません」
空気が変わった。
「……今、何と言った?」
「緑谷くんの身体を、少しだけ回復させます。リカバリーガールの治療を邪魔するつもりはありません」
「待ちなさい。あんたの個性は――」
「大丈夫です。緑谷くん、かなり損傷が激しい」
その言葉に、リカバリーガールは何かを言いかけて、口を閉じた。彼女の個性について、知っていることはある。
だが、身体の損傷を直接回復させる力があるとは聞いていなかった。それが本当なら、話は大きく変わる。
「……分かった。ただし、私の指示に従うんだよ」
彼女は緑谷の傍らに膝をつき、安心させるように微笑んだ。
「少しだけ、楽にしてあげる。だから、じっとしていてね」
彼女は、そっと緑谷の腕に手を添えた。
そして、目を閉じる。
――個性、発動。
彼女の指先から、淡い光が滲むように広がった。
緑谷の身体を包み込むように、静かに浸透していく。
彼女は損傷した部位を慎重に見極め、個性の力を集中させた。
骨や関節、筋組織の状態を確認し、傷ついた組織の回復を促す。
損傷の程度を見極め、緑谷の身体に過剰な負担がかからないよう、少しずつ。
数秒。
十数秒。
やがて、緑谷の表情から、わずかに苦痛が和らいだ。
緑谷の表情が和らぐ。
オールマイトは息を呑んだ。
「な……!?」
リカバリーガールも、信じられないものを見るように目を見開いていた。
彼女は手を離し、緑谷の腕の状態を確認する。
損傷はまだ残っている。
だが、先ほどまでの状態とは明らかに違っていた。
治療を続けられるだけの余地が生まれている。
「……これなら、続きを進められる」
リカバリーガールはすぐさま治療に取りかかった。
彼女の個性によって負担の大きな損傷がある程度回復したことで、リカバリーガールの治癒も進めやすくなったのだ。
二人の力が重なり、緑谷の治療は少しずつ前へ進み始めた。
やがて、彼女は静かに手を下ろした。
「……ふう」
額に、うっすらと汗が浮かんでいた。
一度に扱える損傷の範囲には限界がある。
無理に力を注げば、彼女自身の身体にも負担がかかる。
だからこそ、必要な分だけで止めた。
