第4章 雄英体育祭編
「……そろそろ、戻りますね」
彼女は立ち上がり、受け取った体操服を抱えた。
「そうしな。次の試合を見逃すよ」
「はい。リカバリーガールも、無理はしないでくださいね」
「それはこっちの台詞だよ」
彼女が扉へ向かいかけた、そのときだった。
「リカバリーガール!!」
勢いよく扉が開いた。
姿を現したのは、オールマイトだった。
その腕には――。
「緑谷くん!?」
彼女は思わず声を上げた。
抱えられた緑谷出久は、見るからに痛々しい状態だった。
両腕は大きく損傷し、指の関節は不自然に曲がっている。顔にも傷があり、意識はあるものの、苦痛に顔を歪めていた。
先ほどまでスタジアムを沸かせていた激闘。
その代償が、目の前にあった。
「早く、診てくれ!! この子の腕が……!」
オールマイトの声には、隠しきれない焦りが滲んでいた。
リカバリーガールは一目見ただけで、表情を険しくした。
「……まったく、また無茶をしたね」
緑谷の両腕を確認し、曲がった指の関節に目を向ける。
「両腕の骨折に、個性の過剰使用による深刻な損傷……。自分の身体が耐えられる限界を、何度も超えたんだろうね」
「彼は、勝つために……!」
「理由は分かってるよ。でも、身体は理由を聞いちゃくれない」
リカバリーガールはすぐに治療の準備を始めた。
彼女の個性による治癒は、対象者自身の自然治癒力を大きく促進するものだ。
しかし、傷が深刻であるほど、回復に必要な体力も大きくなる。
まして、緑谷のように全身の負担が限界を超えている場合は、治療そのものが新たな危険を招きかねない。
「……厄介だね。これだけの損傷じゃ、私の個性だけで簡単に済ませられる状態じゃないよ」
リカバリーガールの額に、深いしわが寄った。
オールマイトは拳を握りしめる。
「緑谷少年……」
その光景を、彼女は黙って見つめていた。
――まただ。
限界を超えてでも、前へ進もうとする人間。
自分の身体を犠牲にしてまで、何かを成し遂げようとする人間。
彼女は、緑谷の姿にかつての自分を重ねていた。
(……このままじゃ、次も同じことをする)
緑谷はきっと、また誰かを助けるために自分を傷つける。
それが彼の強さであり、同時に危うさでもある。
彼女は一歩、前へ出た。