第4章 雄英体育祭編
「……厄介な奴に捕まったな」
「先生……助かりました」
「別に」
相澤が歩き出す。
彼女もその後ろをついていく。
数歩のところで相澤の足が止まった。
「……ん?」
彼女も止まる。
「どうしました?」
相澤は彼女をじっと見る。
「お前」
「はい?」
「……何だ、この匂い」
「……」
彼女の顔が固まった。
相澤が少し近づく。
「煙草?」
「……」
「お前、煙草吸ったか?」
「…………」
沈黙。
相澤の目が据わる。
「おい」
「……すみません」
「雄英生が何しとんだ」
「……」
相澤の手が伸びる。
「痛っ!」
頬をむにっとつねられる。
「せ、先生……!」
「高校生が昼休みに校舎裏で煙草って、お前な……」
「痛いです!」
「反省しろ」
「してます……!」
「本当に?」
「してます!」
相澤は頬をつねったまま、ため息をつく。
「……ったく」
ようやく手を離す。
赤くなった頬を押さえながら、彼女は俯いた。
「……すみません」
「今回は見逃さない」
「え」
「あとで話す」
「……はい」
相澤は再び歩き出す。
「本来なら、成人しているから咎める筋合いはないが、今のお前は高校生だ。体育祭で問題を起こせとは言ってない」
「……(めっちゃ怒ってる。目が…!)」
彼女は小さく肩を落としながら、相澤の後をついていく。
スタジアムから、再び大きな歓声が聞こえてくる。
「……行くぞ」
「はい」
そして彼女は、少し赤くなった頬をさすりながら呟いた。
「……ホークスより先生の方が怖い」
「聞こえてるぞ」
「……」
二人はスタジアムへ向かって歩いていた。
頬には、さっきつねられた跡がうっすら残っている。
彼女はそれを手でさすりながら、ぼそっと呟いた。
「……私、一応中身は成人してるんだけどな」
「……」
相澤の足が止まる。
「何か言ったか?」
「いえ」
「もう一回言ってみろ」
「……」
彼女が目を逸らす。
「私、一応――」
むにっ。
「痛っ!」
また頬をつねられた。