第4章 雄英体育祭編
彼女が振り返る。
凄まじい勢いで爆豪が近づいてくる。
「何かな?」
「何かなじゃねぇ!!!」
爆豪は彼女の目の前で怒鳴った。
「正々堂々と戦いやがれ!!!」
「……?」
「テレポートなんざ、こざかしい真似しやがって!!!」
「テレポートじゃないよ」
「細けぇんだよ!!」
「細かくないと思うけど……」
「うるせぇ!!!」
爆豪は完全に頭に血が上っていた。
「てめぇ、あの一瞬で消えただろうが!! 気づいたら轟の後ろにいやがった!!」
「うん」
「認めんのかよ!!!」
「だって、そういう個性だから」
「クソが!!」
爆豪は拳を握り締める。
「次に当たったら、絶対ぇ逃がさねぇからな!!」
彼女はそんな爆豪を見て、少しだけ目を細めた。
相変わらず、分かりやすい。
怒っている。
けれど、その目の奥にあるのは怒りだけではない。
悔しさ、興味、戦ってみたいという、剥き出しの欲求。
彼女には、それがよく見えていた。
「……ふふ」
「何笑ってやがる!!」
「爆豪くんって、本当に分かりやすいね」
「テメェ……!!」
「でも」
彼女は穏やかに笑った。
「次に戦うときは、私も楽しみにしてるよ」
「……!」
一瞬、爆豪が言葉を失う。
だがすぐに顔をしかめた。
「上等だァ!!」
その横で、轟がぽつりと呟く。
「……やっぱり、あんたは面白いな」
「そう?」
「戦い方が普通じゃない」
「褒め言葉として受け取っておくね」
彼女が笑う。
そのとき――
「ねえねえ!」
麗日が声を上げた。
「もういいじゃん! せっかく四位だったんだし!」
「そうだよ!」
緑谷も笑う。
「みんなで取れた四位なんだから!」
発目も満足げに胸を張る。
「ベイビーの作戦も完璧でした!」
「……ふふっ」
自然にこぼれた笑顔だった。
「うん。……楽しかったね」
その笑顔を見て、緑谷も麗日も笑う。
騎馬戦を終えた四人の間に、ようやく穏やかな空気が戻ってきた。