第4章 雄英体育祭編
「……これなら」
彼女の個性が発動する。
「え?」
緑谷の身体が、ふっと揺らいだ。
ドンッ!!
さっきまで緑谷たちがいた場所に、別の騎馬が突っ込んでいく。
「なっ!?」
観客席がどよめく。
「消えた!?」
「いや、違う!」
大型スクリーンが彼女たちを捉える。
少し離れた場所。
そこに、緑谷たちのチームがいた。
「場所が変わったァァァ!?」
プレゼント・マイクが叫ぶ。
「一体何が起きたんだァ!?」
彼女は空中から地上を見下ろし、小さく笑った。
観客席から歓声が上がる。
「またあの個性だ!」
「地雷の時と同じ個性なのか!?」
「何でもありじゃないか!?」
「どうやってるんだ!?」
彼女は、そんな声を聞き流すように次の標的を探す。
(今のところ問題ない)
空中。
地上。
周囲の騎馬。
それぞれの動きを俯瞰しながら、彼女は次々と指示を飛ばしていく。
「緑谷君、十時方向」
「はい!」
「麗日さん、少し下がって」
「分かった!」
「発目さん、右から来るチームを見て!」
「了解!」
その指示は的確だった。
危険を察知すれば避ける。
追い込まれれば位置を変える。
必要なら空中へ逃げる。
正面から戦わず、相手の動きを利用して戦況そのものを変えていく。
「す、すごい……」
緑谷は思わず呟いた。
(彼女は戦ってるんじゃない)
(戦況そのものを動かしてる……!)
だが、その動きが、誰かの目にはひどく目障りに映っていた。
「……チッ」
爆豪だ。
彼は、遠くから彼女を睨んでいた。
緑谷の鉢巻を狙う。
それは間違いない。
だが、それ以上に、爆豪の視線が、空中を滑る彼女を捉える。
あいつがいる限り、自分たちの動きが読まれる。位置を変えられる。逃げ道を作られる。仲間へ指示を出される。
(あいつ、戦場を見えすぎてやがる)
爆豪の口元が歪む。
「……クソが」
狙いを変えた。
「デクじゃねぇ」
轟の氷を爆発でかわす。
そのまま、一気に方向転換。
「まず、テメェだァ!!」
「……!」
彼女が振り向いた。
爆豪が、一直線に迫ってくる。
「かっちゃん!?」
緑谷が叫ぶ。
だが、爆豪は止まらない。
「テメェが指示出してんのが、一番ムカつくんだよ!!」