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雨の神様 【呪術廻戦(春夏秋冬代行者)】

第11章 霽雨



乙骨side

「五月雨さん……っ!? 雫ちゃん!!! しっかりして!!!」

廊下に響き渡った自分の叫び声が、まるで他人のもののように遠く聞こえた。
僕が地面を蹴って彼女の元へと駆け寄ったときには、真希さんもパンダくんも、狗巻くんも、全員が息を呑んで硬直していた。
それほどまでに、床に倒れ伏した彼女の姿は、あまりにも唐突で、あまりにも儚かった。

「雫……っ、嘘だろ、おい……!」

抱き上げた彼女の身体は、驚くほどに冷え切っていた。それなのに、触れた肌からはじっとりとした異様な湿度のような熱が感じられて、胸元が激しく、苦しそうな呼吸を繰り返している。

「憂太! ぼさっとすんな、早く医務室に運ぶぞ!!」

真希さんの声にハッと我に返り、僕は彼女の小さな身体を壊れ物を扱うようにお姫様抱っこで抱きかかげると、高専の長い廊下を、文字通り脱兎の如き速さで駆け抜けた。
医務室のドアを肩で乱暴に押し開けると、特有の消毒液の匂いと、微かなタバコの煙の香りがツンと鼻腔をくすぐる。

「硝子さん!!! 五月雨さんが、急に倒れて……っ!!」

「……っ、何だって!?」

デスクにいた硝子さんが、僕の形相と腕の中の彼女を見た瞬間、咥えていたタバコを灰皿に押し付け、目を見開いて立ち上がった。

「ベッドに寝かせな。憂太、あんたはそこをどいて!」

慌てて彼女をベッドに横たわらせると、硝子さんはすぐに診察に入った。彼女の胸元に聴診器を当て、冷え切った手首を取り、顔をしかめて脈を測る。その表情は、いつもの気だるげなものとは一転して、驚きと険しさに満ちていた。

「これは……。昨日診た時よりも、遥かに具合が悪くなってる。……何か心当たりは!?」

「……っ」

硝子さんに鋭く問われ、僕はベッドの横で、激しい後悔の波に襲われて唇を血が出るほど強く噛み締めた。

どうして——どうして僕は、気づけなかったんだ。
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