第13章 五月雨
——だけど。正直に言うと、僕は、ほんの少しだけ……いや、結構、嫉妬していた。
彼女が感情を豊かにして、甘えるようになったのは、僕に対してだけじゃなかったからだ。
昨日の放課後だって、グラウンドから戻ってきた憂太の泥だらけの服を見て、『憂太くん、お疲れ様ー!』って言ってハンカチを差し出して、憂太が「ありがとう、雫ちゃん」って頭を撫でるのを嬉しそうに受け入れていた。
真希に「お前、これ食うか?」ってお菓子を差し出されれば、目を輝かせて『食べる!』って真希の腕にぎゅっと抱きついて懐いていたし、棘のスマホの画面を覗き込んでは、二人で楽しそうにクスクスと顔を見合わせて笑い合っている。
パンダに至っては、雫から抱きついて、『パンダくん、ふかふか!』なんて言って嬉しそうにしていた。
と、まぁこんな感じでとっても仲良くなっていた。
それに、みんなにはタメ口なのに、僕には敬語。
なんでも『え?だって、先生には敬語を使わないと』だそうだ。
一回お願いしてみたけど、『先生には敬語です…!』と返されてしまった。
みんなと打ち解けて、秘密がなくなって、心の底から仲良くなれたのは、僕だってすっごく嬉しいよ?
嬉しいんだけどさ……生徒相手とはいえ、僕の可愛い神様が、僕の知らないところで、あんな風に無防備にべったりと甘えている姿を見るのは、僕だって、流石に面白くないわけ。
「雫ー。憂太たちに甘えるのは週に1回までね。残りの日は全部僕に甘えること。先生との絶対の約束、いい?」
『ええっ!? そんなの、真希ちゃんたちに怒られちゃいます……っ』
僕の我が儘なお願いに、雫は困ったように眉を下げながらも、やっぱり嬉しそうにクスクスと笑って、ぐりぐりと僕の胸に、頭を擦り付けた。
梅雨の時期を南北に分けるっていう無茶なスケジュールの合間。
次の北部の顕現までは、あと1週間ほど——