第11章 霽雨
そんな中、私の姿をじっと見つめていた真希さんが、ふと不思議そうに首を傾げた。
「……なぁ、雫。今日けっこう蒸し暑いぞ? ワンピースの上にカーディガンって、 暑くないか?」
『え……っ、あ、えっと……!』
真希さんの鋭いツッコミに、私は一瞬だけ息を詰まらせ、心臓がドクンと嫌な跳ね方をした。
外はもう、かんかんと太陽が照りつけていて、普通なら汗ばむほどの陽気なのだ。それなのに、私だけが冬のように冷え切った身体を震わせ、カーディガンを羽織っている。それがおかしな違和感であることに、私は言われるまで気づかなかった。
私はこれ以上怪しまれないよう、ニコッと笑顔を作って見せた。
『ふふ、大丈夫です! このお洋服、五条先生が私の体調を気遣って、とっても柔らかくて着心地の良いものを選んでくださったので……嬉しくて、どうしても今すぐ着ていたかったんです』
「あー、なるほどな。あの馬鹿、そういうところだけは無駄に気が利くからな。まぁ、本当によく似合ってるよ」
真希さんは私の嘘の理由に納得して、優しく笑って頭を撫でてくれた。
憂太くんは、私の姿を見た瞬間から顔を一気に真っ赤にしてしまっている。
そんな憂太くんを見て私も、湖のほとりで名前を呼び合えたあの甘い記憶が蘇って、私の頬も、内側の苦しさとは別の熱さでほんのり赤くなった。