第3章 怪雨
着いた場所は自然に囲まれた、とてものどかな場所だった。
少し古びた校舎に入り、部屋へと案内される。
どうせ次の場所でも同じ。私のことなんて、誰も本気で見ようとはしてくれない。
——まぁ、期待するだけ無駄かも。
そんな風に諦めて、心の中で小さくため息を吐いた、その時だった。
案内された部屋の扉が、ガラリと勢いよく開いた。
待っていたのは、目元を包帯で覆った、異様なほど背の高い男の人だった。
「やあ、君が例の雨の神様? 僕は五条悟。ここ、東京都立呪術高等専門学校で、先生やってまーす!」
ひょっこりと軽い調子で手を振るその人は、私の想像していた “怖い呪術師” とは全然違っていて、私は、思わず固まってしまった。
『……初めまして、五月雨 雫と申します』
「うんうん、よろしくねー! さっそくなんだけどさ!
雫、ここで学生体験しない?」
『え……?学生体験……?』
思わぬ提案に、私がパチパチと瞬きを繰り返すと、五条先生は楽しげに笑う。
「そ! ここでじっとしてるなんて、つまんないでしょ?」
「そんな勝手な……!」
すかさず後ろから、皐月さんが抗議の声を上げる。いつになく焦ったようなその声に私が驚いていると、五条先生はひらひらと手を振って、事も無げに言ってのける。
「あ、許可は取ってるよー。それと、君は常に 雫を護衛してなくていーよ。」
「えっ。まぁ、許可を取っているなら……」
上からの命令には逆らえないのか、皐月さんはそれ以上、何も言わずに引き下がった。
でも、私は見てしまった。護衛をしなくていいという五条先生の言葉を聞き、皐月さんが少し嬉しそうにしていたのを——。
そんな私たちを気にする様子もなく、五条先生は私の顔を覗き込む。
「んじゃ、さっそく行こう!」
『え、あ……っ』
そう言って、私は、五条先生に強引に部屋から連れ出された。
その強引さに驚きながらも、私の手を引くその大きな手の温もりに、私はほんの少しだけ、胸が温かくなるのを感じていた。