第8章 谷雨
夕方になり、辺りが少しずつ茜色に染まり始めた頃、私たちは再び伊地知さんの運転する大きめの車へと乗り込んだ。
座席は行きと同じ。私の右隣には、憂太くんが座っている。
車のドアが閉まり、静かに走り出すと、車内には心地よい静寂と、今日一日動き回った心地よい疲労感が満ちていった。
窓の外を流れる、夕暮れ時のオレンジ色の街灯を見つめているうちに、私の瞼は急激に重くなっていく。
いつもなら、張り詰めた神経のせいで、移動中であっても眠ることなんて絶対に許されなかった。いつ賊が襲ってくるか分からない。そんな恐怖が常に頭の片隅にあったから。
だけど、今は違う。
助手席にはどんな時でも全てを跳ね返してくれる「最強」の五条先生がいて、周りには、私の存在を丸ごと受け入れてくれた優しい仲間たちがいる。そして、すぐ隣には、勇気を出して名前を呼び合えた、大好きな憂太くんがいてくれる。
ああ……すごく、眠い……
抗えないほどの強烈な眠気に誘われ、私は意識をゆっくりと手放していった。