第8章 谷雨
「そんなに喜んでくれたなら、連れ出した甲斐があったな〜」
五条先生が頬杖をつきながら、目隠しの奥で優しく微笑んでいるのが分かった。憂太さんも、私の食べる姿を「本当に美味しそうだね」と柔らかい笑顔で見つめてくれている。
——危ないからダメ。立場があるからダメ。
そんな風にずっと縛られていたけれど、こんなに美味しくて、こんなにのんびりとした贅沢な時間が、この世にはあったんだ。
大好きなみんなと過ごす初めての特別なご飯は、私の凍りついていた心を、ゆっくりと、だけど確実に溶かしていってくれた。