第8章 谷雨
『もしよかったら、これ、どうぞ』
そう言って、自分が編んだ花冠を、最初の子の頭に優しく被せてあげる。
「わあ、お姉ちゃんありがとう!」
小さな子がピカピカの笑顔を弾けさせて、お礼を言ってくれた。
「じゃあ、僕のもどうぞ。はい、ぴったりだね」
「しゃけ、おかか!」
憂太くんも、棘くんも、自分の手元にあった綺麗な花冠を、嬉しそうにしている子どもたちの頭にふわりと優しく乗せてあげたのだ。乗せてもらった二人は、少し照れくさそうに、だけどとても優しい顔をして笑っている。
「あーっ! ずるい! 私の分はないの……?」
最後の一人の女の子が、花冠が足りなくて少し寂しそうに声をあげる。すると、その子の前に、五条先生がひょいと屈み込んだ。
「あはは、ちょっと待ってね……」
先生は長い指先を驚くほどの速さで動かすと、足元に咲いていたシロツメクサをささっと、一瞬にして美しい花冠に編み上げてしまった。
「はい、お姫様。とびきり可愛い特製品をどーぞ!」
「わあ……! すごい! お兄ちゃん魔法使いみたい! ありがとう!」
最後の女の子も、先生から贈られた完璧な花冠を頭に載せて大喜びしている。子どもたちはみんな、弾むような笑顔を浮かべて何度も手を振りながら去っていった。その後ろ姿を見送りながら、私の胸の奥はとても優しいぬくもりで満たされていく。
「……んじゃ、お腹も空いたし出発するか、雫」
『あ、はい……っ!』
みんなで編んだ花冠は子どもたちに全部あげてしまったけれど、五条先生が私のために編んで、一番最初に頭の上に載せてくれた綺麗な花冠だけは、落ちないようにそっと両手で支えながら、私は自分の「特別な宝物」として大切に持って歩き出した。
真希さんに優しく手を引かれ、私たちは歩いてすぐの場所にある、レンガ調の可愛らしいお店へと向かった。