第8章 谷雨
——真希さんは早々に飽きてしまったみたいで、今は、編めずに断念したパンダさんと、みんなの為に編みやすそうなシロツメクサを集めてくれていて、憂太さんはその隣で、丁寧に編んでいる。
そんな中、ふと横に目を向けて、私は驚きのあまり動きを止めてしまった。
「ほら、棘。僕の、めちゃくちゃクオリティ高くない?」
「しゃけ! めんたいこ!」
見ると、五条先生の手元には、一本の緩みもなく綺麗に編み込まれた、まるでお店で売っているかのような完璧な花冠が出来上がっていた。
そのすぐ隣いる、棘さんの手にも美しく編み上げられた花冠があった。
『えっ……お二人とも、すごく上手ですね……!!』
「あはは、最強は何をやらせても完璧だからね〜」
「しゃけ」
普段は呪霊と戦う強い呪術師たちなのに、手先がびっくりするほど器用だというギャップが凄すぎて、私は目を丸くした。五条先生は得意げに笑うと、出来立ての、雫がキラキラ輝く一番綺麗な花冠を、私の頭の上にそっと載せてくれた。
「はい、雫。花の冠をどーぞ」
『わぁ……!五条先生……ありがとうございます……っ』
私の頭の上に載った、きらきらと雫の輝く綺麗な花冠。
先生が私のために作ってくれたその温もりが嬉しくて、私は胸いっぱいの幸せを感じていた。
「あー、なんか腹減ってきたな」
真希さんがお腹をさすりながら、ぽつりと呟く。
「だな。朝から何も食わずに来たし、俺も腹ペコだぞ」
「しゃけ……」
パンダさんや棘くんもお腹の音を鳴らしそうな勢いで賛同する。すると、それを見ていた五条先生が「じゃあさ!」とポンと手を叩いた。
「この公園のすぐ近くに、地元でも有名なすっごく美味しい洋食屋さんがあるんだよね。そこでお昼ご飯にしよう!」
「よっしゃ、決まりだな」とみんなが立ち上がり、移動の準備を始めたとき、私たちのすぐ近くを、数人の小さな子どもたちが楽しそうに走っていくのが見えた。子どもたちは、私たちが持っているシロツメクサの花冠を、羨ましそうにじっと見つめている。
私は少しだけ微笑むと、子どもたちの元へと歩み寄った。