第8章 谷雨
「あはは! 憂太ってば、意外とそういうオカルトちっくなおとぎ話好きなんだね〜。かわいい〜」
助手席に座っている五条先生がいつも通りの軽い調子で、けらけらと笑いながら会話に入ってきた。
「でもさ、そんなのいたら今頃大ニュースになってるでしょ? ほら、それより、もうすぐ公園に着くよ! 何して遊ぶか考えといてよね〜!」
「え……あ、はい。すみません……」
先生のあまりにも自然な、だけど確実に、僕たちの話を遮って、五月雨さんを守るような物言いに、僕はそれ以上言葉を続けることができなかった。
バックミラーに映る先生の目隠しされた顔は、いつも通り呑気に笑っているように見える。だけど、その奥にある瞳が、僕の探りをすべて見抜いた上で「これ以上はダメだよ」と優しく釘を刺しているような、そんな大人の凄みを感じた。
五条先生……やっぱり、先生は全部知ってるんだね。
五条先生の言葉のおかげか、少しホッとしたような五月雨さんの横顔と、前を見据える先生の背中を見つめながら、僕は静かに思考を沈めた——。