第6章 茂み雨
先生がグラウンドに向かって大きく手を振ると、15周を走り終えたみんなが、こちらへ戻ってきた。
汗だくでバテバテのはずなのに、憂太さんは、私と目が合うと嬉しそうに「走り終えたよ」と笑って言ってくれた。
そんな中、私はふと疑問に思った。
……そういえば、パンダさんって走る必要があるのだろうか、と。
「はぁ……死ぬかと思った……」
「憂太、昨日より5周増えただけだろ。私はまだまだいけるぞ」
「おかか……」
あんなに走ったのに、真希さんがピンピンしているのが私は驚きだった。パンダさんのことは一旦置いておくとして、真希さんの体力は本当に底が知れない。
すると、パンダさんが、私にだけ聞こえるような声でコソッと話しかけてきた。
「悟と話せたんだな」
『あ……』
私はその言葉に、ハッとした。
パンダさんは、私が、事情を知っている五条先生と話せるように、あえて自らも走って、ゆっくりお喋りできる時間を作ってくれていたのだ。パンダさんの優しい意図を理解して、私の胸がじんわりと熱くなる。
『はい! ありがとうございました!』
私が満面の笑みで小さくお礼を言うと、パンダさんは大きな肉球を揺らしてニッと笑ってくれた。
「よし! 体力作りはここまでにして、次は武具同士の立ち合いにしようか!」
先生の容赦ない言葉にみんなが「げっ」と顔をしかめつつも、すぐにそれぞれの木刀や武器を構える。