第6章 茂み雨
私の答えを聞き、五条先生はしばらく何も言わなかった。
目隠しの奥の視線は、相変わらずグラウンドを走る生徒たちに向けられたままだ。
沈黙が、私の肌を小さく刺す。
笑みを張り付かせたまま、私はきゅっと着物の袖を握りしめた。
……でも、本当は、寂しいし…不安だ。
安心しているのは嘘じゃない。冷たく当たってくる皐月さんが居なくて、穏やかに過ごせている。けれど、やっぱり心細いのは、今の私に、自分の抱える重い宿命も、過去の傷も、すべてを打ち明けられる人が誰も居ないからだ。
「……そっか」
ぽつりと先生が呟いた。
そして、大きな手を私の頭に乗せると、くしゃくしゃと、だけど驚くほど優しい手つきで撫でてくれた。
「大丈夫だよ。憂太たちは、きっと君にとってすごくいい仲間になるからさ。勇気が出たら、打ち明ければいい。それまでは僕が支えるよ」
『五条、先生……』
五条先生には、見抜かれていたみたいだ。
いつもの軽い調子とは違う、大人の包容力に満ちた言葉。
私の秘めた孤独をすべて察してくれたかのようなその手の温かさに、胸の奥の冷たい不安が、少しずつ溶かされていくような気がした。
「ほら、噂をすればみんな戻ってきたよ」