第12章 液雨
——どれくらいの時間が経ったのだろう。
ふと目が覚めると、窓の外はすっかり綺麗な茜色の夕方に染まっていた。
開け放たれた窓から涼しい夕方の風が吹き込んでいて、デスクの方を見ると、いつの間にか戻ってきた硝子さんが静かに書類を整理しているのが見えた。
呼吸の苦しさは、寝る前よりもずっと楽になっている。
あ……、
ふと右手に重みを感じて視線を落とすと、そこには、私の右手を両手でぎゅっと握りしめたまま、ベッドの端に突っ伏すようにしてすやすやと眠りこけている憂太くんの姿があった。
パイプ椅子に座ったまま、こんな窮屈な体勢で、彼は私が眠っている間もずっと、付きっきりで私の手を温め続けてくれていたのだ。
こんなところで寝かせてしまって、申し訳ないな……
彼の首や身体が痛くなってしまわないか心配になりつつも、その真っ直ぐな優しさがたまらなく愛おしくて、胸の奥がぽかぽかと温かくなる。
私は起こさないようにそっと右手を抜くと、ベッドからゆっくりと身体を起こした。
『あの……硝子さん。私、ちょっとお風呂……入ってきますね。昨日はバタバタしてしまって、入れませんでしたし……』
「起きたのか……お風呂はいいけど、無理はしないでね。」
『はい! ありがとうございます。……あと、憂太くんのこと、よろしくおねがいしますね』
私が小さく微笑むと、硝子さんは「はいはい、風邪引かないように上着でもかけとくよ」と呆れたように笑って頷いてくれた。