第12章 液雨
「四季庁へ直接掛け合い、梅雨の顕現を明日行うことになりました。今回の顕現の先延ばしは、今までのあなたの中で、最長です。
あなたの身体がここまで持ち堪えたのは、正直に言って奇跡に近い。これ以上ずらせば、本当に手遅れになるところでした」
『明日……ですか……っ』
私の身体の奥では、行き場をなくして膨れ上がった莫大な『神通力』が、今にも堤防を壊して外へと溢れ出しそうになっていた。けれど、みんなに受け入れられた心のあたたかさのおかげで、今はなんとかその暴走を自分の内側へと抑え込むことができている。
「許可は取りました。明日に向けて、今日はとにかく体力を温存するために、大人しく眠っていなさい」
皐月さんはそれだけを言い残すと、背を向けて部屋を出て行ってしまった。不器用で、冷酷な人。
だけど、私のために、四季庁に掛け合ってくれた彼女に、私は心から感謝していた。
——これまでは怯えてばかりで、彼女の背景に目を向ける余裕なんてなかった。
だけど、憂太くんたちと心を通わせ、少しだけ心に余裕ができたからだろうか。
私は初めて、彼女のことが、少しだけ知りたくなった。
彼女はどんな人なんだろう——と。
ベッドに横たわって考えていると、入れ替わるようにドアが開いた。