第12章 液雨
——朝、目が覚めた私は、窓の外から聞こえる鳥の囀りに耳を澄ませていた。
すると、コンコン、と静まり返った医務室に、規則正しいノックの音が響いた。
入ってきたのは、書類を片手に持ったまま、いつも通り張り詰めた冷徹な目を光らせた——皐月さんだった。
私はベッドの上に少しだけ身体を起こすと、昨日、どうしても嘘を吐き続けることができなくて、高専のみんなに自分の本当の正体を打ち明けてしまったことを、正直に皐月さんへと告白した。
「……高専の連中に、自分が『梅雨の代行者』であることを話した、と?」
私の言葉を聞いた瞬間、皐月さんの眉が不機嫌そうにピクリと跳ねた。
「あれほど世間への秘匿は絶対だと教え込んできたはずです。彼らは四季庁の人間ではないのですよ。もしも情報が外部に漏れたら、どうなるか……」
いつもの冷酷な声音で、チクリと厳しく怒られてしまう。
私はベッドの上で小さく身を縮こまらせて、ぎゅっと着物の袖を握りしめた。
「……。ですが、……まぁ、いいでしょう」
『え……?』
「よろしくない行動には変わりありませんが……、今のあなたは、いつもより精神が安定していますしね。
神通力や、季節の顕現は、あなたの心に大きく左右される。彼らに受け入れられたことが、良い薬になったということですか……」
あぁ、皐月さんはいつもそう——。いつも私に冷たい言葉ばかりをぶつけて、保身のことばかりを気にしていて、凄く怖い。
だけど……私が本当に困っている時や、本当に身体がしんどくて限界な時、私の本当に大切なもの、譲れないものには、こうしていつも、少しだけ優しくなったり、見逃したりしてくれる。
皐月さんは私の顔をじっと見つめると、ふっと小さくため息を漏らした。