第12章 液雨
いつもは、明るく飄々としているのに——。
今の先生から漂う空気は、息が詰まるほどに甘くて、濃密な温もりに満ちていた。
あまりの気恥ずかしさと、胸のドキドキという高鳴りに耐えきれなくなって、私はゼリーを持つ手を少しだけ震わせながら、勇気を出して呟いた。
『あの……五条先生。な……なんか、いつもと、雰囲気、違いませんか……?』
「そお?」
先生は、ふわりと口元を緩めて笑った。
「別にいつも通りだよ。……ただね、僕の前だけで笑ってて欲しかったのに、昨日の夜は憂太の胸でたくさん泣いちゃうし、午前中はみんなに囲まれて楽しそうにしてたらしいしさ。
先生、ちょっと寂しかったんだよね。だから今は、僕だけで君をいっぱいに甘やかしてあげたいなーって」
『えっ……』
そんな言葉を耳元で囁かれて、私の顔は一瞬にして真っ赤に染まってしまった。恥ずかしくて布団を鼻の頭まで引き上げると、先生はあははと嬉しそうに笑って、また私の頭を優しく何度も撫でてくれた。
それから、先生は、ずっと私のそばに居てくれた。
一時間が経ち、二時間が経ち、夕方のオレンジ色の光が窓から差し込み始めても、先生は一向に立ち上がる気配がない。