第12章 液雨
あっという間に午後の授業の時間になってしまった。
あれほど賑やかだった医務室が、一瞬にして元の静寂へと戻っていく。
真希ちゃんや憂太くん、パンダくん、棘くんのみんなは、午後の時間はそれぞれ別の場所へ任務に向かうため、後ろ髪を引かれるような顔をしながら「また夜にね!」と出かけて行ってしまった。硝子さんも、忙しいみたいで、席を外している。
静かになった部屋で、私は硝子さんが開けてくれた窓から入る心地よい風を感じながら、ベッドの上で横になっていた。
すると医務室のドアが静かに開いた。
入ってきたのは、いつも通りの黒い服に身を包んだ、五条先生だった。先生は手に、デパートの綺麗な紙袋を提げていて、私のベッドの脇まで来ると、パイプ椅子を引き寄せて腰掛けた。
「やっほー、雫! 午後の任務、秒殺して終わらせて帰ってきたよ〜。これ、お土産!」
先生が袋から取り出したのは、ガラスの器に入った、色とりどりのとっても綺麗なゼリーだった。
「硝子から、冷たいものがいいって聞いたから、ゼリーがいいかなと思ってさ。はい、あーんして」
『えっ……っ!? ご、五条先生!?私、自分で食べられますよ……っ!』
「えー、………はい、スプーンどーぞ」
『ありがとうございます』
先生から手渡されたスプーンで、ちょっと冷たくて瑞々しいゼリーをそっと口に運ぶ。
とろけるような甘さと冷たさが口いっぱいに広がって、じっとりと蒸し暑かった私の身体に、すうっと心地よく染み渡っていった。
『……っ〜!すごく美味しいです!』
「それはよかった」
私がスプーンを握ったまま目を輝かせ、五条先生を見ると、先生は頬杖をつきながら、私のことをじっと、優しく見つめてくれていた。
先生の大きな右手がそっと伸ばされ、私の額や髪を、まるで壊れ物を扱うように何度も優しく、優しく撫でてくれる。