第3章 怪雨
大きなパンダに、綺麗な女の子、口元を隠した男の子、そして、一際、柔らかく優しそうな雰囲気を纏った男の子がいた。
窓際に座るその男の子は、私と目が合うと、少し手を振ってくれた。
……よかった。あの人となら、なんとか仲良くなれるかもしれない。
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、私は「パンダさん」に釘付けになった。
わぁ……本物みたい……!すごい……!
本物の動物ではないとはいえ、動物園にすら行ったことのない私は、思わず心の中で興奮してしまった。
このパンダさんは “呪骸(じゅがい)” というらしい。あらかじめ皐月さんから送ってもらっていた資料に書いてあった。
資料があって助かった——。
それがなければ、きっと、私は驚きのあまり、『パンダ!?』と大声を上げていたか、腰を抜かしていただろう。
そんなことを思っていると五条先生が話し出した。
「はーい、みんな注目ー! 訳あって、今日から少しの間、高専に仲間入りする、五月雨 雫ちゃんでーす!」
先生の軽い紹介に、教室内が一気に静まり返る。
私は緊張で体がガチガチになりながらも、一歩前へ踏み出した。先生の隣に立ち、挨拶をする。
『ご紹介に預かりました。五月雨 雫と申します。少しの間ですが、お世話になります。よろしくお願いいたします』
「みんな仲良くしてあげてね!」
呆気に取られているのか、固まっている皆さんを全く気にせず、先生は話し続ける。
「そんじゃ、みんなは僕が簡単にささっと紹介するねー!」
「左から、禪院真希!狗巻棘!乙骨憂太!それから、後ろに座ってるのがパンダ!」
本当にささっとだった。私が、あらかじめ資料を見ていたとは言え、こんなに簡潔に済ませてしまうものなの?
さっきも思ったが、改めて思う。
——本当に資料があってよかった。
「 雫、みんなについては、名前だけで大丈夫だよね?」
『はい、大丈夫です』
少し戸惑いながらも、返事をする。
「んじゃ、 雫の席は、パンダの隣のあそこね!」
『わかりました』
先生に指定された席に向かうため、乙骨さんの横を通り過ぎた——その瞬間だった。