第2章 酔い覚まし…【銀時】
酒の肴は、もっぱら日頃の愚痴だった。
だけど、銀さんの表情は不思議と楽しげで、とても不満が溜まっている様子ではなかった。
そっか。
これはただの愚痴なんかじゃないんだね。
それだけ銀さんは、みんなの事を大切に思ってるんだ。
「おい、。聞いてんのかァ?」
「ちゃんと、聞いてますよ。銀さんが、どれだけみんなの事を大切に思っているのか、よく分かりましたよ。」
「……。いや、お前は何も分かってねェ…」
「え?」
突然、銀さんの声色が変わった。
あれ?私なにかまずい事言ったかな?
すると、銀さんは急に立ち上がり、私の手を掴むと、そのまま店を出ようとした。
「ちょ、ちょっと!銀さん!?」
「ババァ!こいつはもう上がりってことで。」
お登勢さんの返事も待たず、銀さんは私を連れて店を出た。
そして、そのまま何も言わずに万事屋への階段を登り始めた。
階段の踊り場まで来ると、銀さんは足を止めた。
そして、掴んでいた私の手を放すと、背を向けたまま話始めた。
「。お前、さっき俺がみんなを大切に思ってるって言ってたよなァ。」
「はい…。」
「確かにそうかも知れねェ。けどな、俺にとって一番大切なものに、お前はまだ気付いてないみたいだな。」
そう言って振り向いた銀さんは、いつになく真剣な眼差しを私に向けた。
目を合わせるのが恥ずかしく感じて、私は思わず後ずさりしてしまった。
すると、銀さんは目を逸らす事なくジリジリと距離を縮めてくる。