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ハンドレッドノート -誰そ彼の少女-

第2章 私にはない絆


私は静かに、二人の追跡劇の観察を始めた。
前を走る二人の動きには、無駄な迷いが一切ない。
仁さんが男との距離を詰めるため、最短ルートの直線で一気に加速する。ただ足が速いだけではない。男の不規則な足取りを瞬時に予測し、ジリジリと退路を断っていくような、極めて論理的で鋭い追い詰め方だ。
犯人に聞こえないように、仁さんが何か、瑠衣さんに耳打ちしている。瑠衣さんは、「おっけー!!」というといきなり脇道に逸れていった。

なるほど……。仁さんが後ろから追いかけ瑠衣さんに指示をする。
瑠衣さんは持ち前の身体能力を生かし、指示通りに先回りをして退路を断っていく、というわけね。……うん、いい連携。

男が仁さんの鋭いプレッシャーに耐えかね、直角に折れて細い路地へ逃げ込もうとした瞬間だった。
すでに先回りしていた瑠衣さんが、男の前に壁のように立ち塞がる。

「——そこまでだ!」

瑠衣さんの真っ直ぐで力強い声が路地に響く。
前を瑠衣さんに塞がれ、後ろからは仁さんが迫る。完全に逃げ場を失った男は、自棄(やけ)を起こしたように懐からナイフを引き抜き、瑠衣さん目がけて狂ったように刃を振り下ろした。

「瑠衣、そのままだ!」

背後からの仁さんの指示に、瑠衣さんは1ミリの躊躇もなく応じた。
瑠衣さんは攻撃を避けるのではなく、あえて男のナイフを持つ手首をガシッと両手で掴み、その場に力強く固定する。
男の動きが完全に止まったその一瞬の隙を、仁さんは見逃さなかった。

仁さんは瑠衣さんの背後から弾丸のように飛び出すと、男の死角から正確無比な鋭い回し蹴りをその顎へと叩き込んだ。
鈍い衝撃音とともに、男の身体が崩れ落ちる。ナイフがアスファルトの地面にカランと虚しく転がった。

……すご。お互いの役割を瞬時に理解して、完璧に信じ合っていないとできない芸当だ……。さすが、ネスト随一の武闘派……。

完全に気絶した男を冷ややかに見下ろす二人を少し離れた場所から見つめ、私は心の中で小さく拍手を送った。
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