• テキストサイズ

死毒に彩なす

第2章 満ちびく執焉




一目見たときから、その容貌に心は奪われていた。


薄紫に変色した肌色。
亀裂にすら見える、どす黒い血管が浮き出た身体。
大きく開かれた眼にも同様の黒い血走りが漲っており、凡そ人ならざる色合いで構成された男だった。

だが、かつては『男も色を覚えるとまで噂された美男子であったという名残は、十二分に残っている。

肌色や血管はすっかり変色し、青白い顔をした死人に比べても遥かに不気味に色付いている彼だが、目鼻立ちは極めてくっきりとしていた。

鼻筋はスッと高く通っているし、唇の形に至るまでが誂えたかのように整っている。

毒の影響で毛髪を始めとする毛が抜け落ちててしまっているようで、睫毛も当然生えてはいなかった。
その為、どうしても目元が窪んで見えてしまうが故にぎょろりと目玉が浮き出て見えるが、そこらの女子よりも眼は丸々としていて大きい。

生憎、変貌する前の彼を知らないから比べようがないものの、噂が本当だとしたら造形美は健在だと思うのだ。

彼の姿を『醜悪』と揶揄する人間は数多いが、むしろこの容姿のどこが?と疑問にすら思う。

青白いを通り越して、淡い紫色を帯びた肌色は美しい。
罅割れを思わせるほど無数に浮かび上がる、どす黒い血管の一筋に至るまでも然り。
むしろ美しさを引き立ててはいまいか。

中でもお気に入りは目だ。目が可愛い。

何も知らない女子供が彼を一目見て、恐ろしいと泣き出すことは珍しくないらしい。
彼と初めて会う武人すらもが、彼と目が合うだけで悲鳴を呑むこともある。

不可思議極まりなかった。
よく見れば愛嬌しかないはずなのに、人々は見れば見るほど不気味と称して慄くばかりで、実に勿体ない。
こんなに可愛いのに。

「はぁ……。中華は広いのに、この世の中は目が節穴な人ばかりですね。なんて見る目がない……」
「ああ。まさにお前のことだ」

シキの戯言を、成恢は手元の調合を止めることなく冷ややかに受け流した。

以前までは不快感を隠しもせず、苦々しく睨みつけてきたものだが、今ではすっかり慣れてしまったらしい。
事実そうなのだろう、こちらに見向きもしないであしらってくる。
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp