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死毒に彩なす

第3章 知らぬが花



――――シキを軍へ引き入れたのは、成恢自身だ。

だが、シキは軍どころか、まともな集団生活すら経験したことがない。
戦場では成恢の命を受けて動かすが、平時においての軍人としての規律や作法を教え、面倒を見ることまで引き受けるつもりはなかった。

有り体に言えば、面倒だったからである。


そもそも成恢自身、人付き合いは極力二の次にしたい人間だった。

根っからの研究者である彼は、時に軍議の場に顔を出すことすら億劫に思い、自らの代理として張印を立たせることさえあった。
将としての年季でいえば成恢よりも上である張印は、もともとの気質が温厚であるためか、少々気が弱いところがある。

そこを成恢に見込まれ――"付け込まれた"とも言う――体よく代理に使われていた。

無論、張印も最初から素直に引き受けるわけではない。
「私には荷が重いのでは……」だの、「成恢殿、ご自身が出られた方が……」だのと控えめな抵抗を見せる。
だが、結局は断り切れずに表に立つ羽目になるのだ。

成恢よりも話が通じる分、会合そのものは滞りなく終わらせて帰ってくるのだが、そのたびに人知れず胃を痛めているのが常だった。


奈棍然り、張印然り、随分と便利に使っているものだと成恢自身も思わなくはない。

もっとも、どちらも文句を言いながらも結局は引き受けるのだから、成恢としては敢えて改める理由もなかった。
文句を言われたところで、十の苦言に百の理屈を返すだけの頭があったともいう。

「今日、旦那さまが連れていってくれたところのお肉、評判らしいですよー。私は味とかよくわからなかったけど、奈棍の旦那さまも軍の上の人たちも、美味しいって」

体験したはずの出来事を他人事そのもののように語るシキを再び一瞥する。
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