第6章 雑用係
「お願いします、学園長先生。もう火事なんて起こしませんし、グリムちゃんのことも私が面倒を見ますから」
「オマエ……」
「グリムちゃんも、キミさえよければ私と一緒にここで暮らしましょー。ね?」
今度は謝罪ではなく、お願いのために頭を下げた私をグリムちゃんが驚いた顔で見上げてくる。
私の腕の中でポカンとしているような、信じられないものを見るような眼差しを送ってくるグリムちゃんにニッコリ笑いかけた。
肝心のグリムちゃんの許可を取っていなかったから、こちらにもぜひとお願いすれば、彼はイエスもノーも返してはこなかった。
……というよりも、びっくりしていて言葉がすぐに出てこなかった、という感じに近い沈黙だ。
――――けれど、腕に掛かっているグリムちゃんの前足が、ほんのちょっとだけキュッと丸められたから。
その小さな仕草を"答え"として都合良く受け取ってしまっても、いい気がした。
「…………ふぅ……仕方ありませんね。いいでしょう」
「ふな゛っ!?本当かっ!?」
「わあっ、本当ですかっ?」
咄嗟に出た言葉が、グリムちゃんと重なる。
悩んだ末に頷いてくれた学園長先生に、逆に詰め寄るようにして前のめりになりながら目を輝かせた。
グリムちゃんなんて、腕から身を乗り出そうとしたから落ちちゃいそうになっていたくらいだ。
慌てて落下を防いで抱え直した拍子にグリムちゃんと顔を見合わせる。
自然と浮かぶ笑みは、聞かずとも互いの気持ちを伝えてくれていた。
ありがとうございます!と、私が満面の笑みでお礼を言えば、学園長先生は「しかし」と口にする。
そうして、私たちがはしゃぐのにストップを掛けるべく掌を翳すと、言い聞かせるようにして言葉を続けた。
「闇の鏡に選ばれなかった……しかもモンスターの入学を許可するわけにはいきません。君についても、元の世界へ戻るまでただ居候をさせるわけにはいかない」
それは、グリムちゃんと、そして私への"条件"を提示する前置きだった。
「なんだぁ……ぬか喜びだゾ……」
喜んだのも束の間。つまらなそうにボヤきながらグリムちゃんが耳と尻尾を垂れ下げた。
ただでさえ疲労で揺れが弱い炎が、さらにしゅんと小さくなって見える。
あらあら……。