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鏡の世界の×××

第1章 出会い


「さあ、丸焼きにされたくなかったらその服を――――ふぎゃっ!?痛ぇゾ!なんだぁ、この紐!」
「紐ではありません。愛の鞭です!」

ついに年貢の納め時だときつく目を瞑った私のすぐ側で乾いた音がしなり、狸ちゃんの悲鳴が相次いだ。
何事かと恐る恐る目を開ければ、そこには紐で縛られた狸ちゃん。

そして――――狸ちゃんの真後ろに立つ、異様なシルエットの人。

鮮やかな群青色のリボンを巻いたシルクハット。
袖を通さず羽織った外套の肩口は、幾重にも重なった黒い羽根飾りが大胆にあしらわれている。
そして、顔の半分を覆った黒い仮面。
細長く前へ突き出した嘴を思わせる仮面の形状と相まって、"人"というよりも"鳥"の印象を先立たせるのが、どこか不気味でいてミステリアスだった。
けれども、大きな青い襟元には金色の、黒のベストには紺碧色の繊細な刺繍が織り込まれ、細かな意匠に格式高い優雅さが窺える。

月光を背後に湛えたその人が靴音とステッキをコツコツと小気味良く鳴らして部屋の中へと入ってくると、羽の形のように先端に向かって裂けた外套の裾がまるで本物の翼がはためくように大きく揺れる。

「ああ、やっと見つけました。君、今年の新入生ですね?ダメじゃありませんか。勝手に扉(ゲート)から出るなんて!それに、まだ手懐けられていない使い魔の同伴は校則違反ですよ」
「離せ~!オレ様はこんなヤツの使い魔じゃねぇんだゾ!」

状況が呑み込めず、何も言えずにいる私を余所に紐――曰く、愛の鞭らしい――に捕われた狸ちゃんはジタバタともがいて抗議するも、仮面の男性は紳士的な口調とは裏腹な二度返事で聞き流していた。

挙句の果てには「反抗的な使い魔はみんなそう言うんです」と、にべもなく言った後、狸ちゃんの身体を縛る紐を口元まで伸ばしてグルグル巻きにしてしまう。身動きが取れなくなって白目を剥く狸ちゃん。
身体はおろか口まで不自由にさせられては、どうしようもないらしい。
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