第1章 出会い
――――果たして、とっても長い間続いたように思える追いかけっこに終止符が打たれた。
それは、本棚で埋め尽くされた大きな建物の中に逃げ込んだ矢先のことだ。
「はぁ……はあッ……!はっ……ぅ、げほっ!はぁっ……、っも、……もうダメ、げん、かい……っ」
息も絶え絶えになりながら、最後の力を振り絞って扉を閉める。
そのまま部屋の奥へと身を隠せばいいものを、体力を完全に使い果たした私は、そのまま扉に背を預けてずるずるとへたり込んでしまったのだ。
立てた両膝に額を付けると、ズボンに汗がじわりと染み込む。
しばらくは動けそうになかった。
喉もカラカラで、お水が恋しい。
せめて感覚にリアリティがなければよかったのに、どうして夢の中なのにこんなに何もかも本物みたいに再現されているのかしらー……。
走り疲れた足が今にもがくがくと震え出しそうだ。
もう一歩も動けない心地に蝕まれながらも、立ち上がるのが億劫で、這うようにして逃げ場を探そうとする。
が、そんな鈍間なことをしていれば、どうなるかは火を見るよりも明らかで――。
「ふ~~な゛ぁ~~~ッ!!」
「きゃああッ!?」
音を立てて開け放たれた背後の扉。
そして、目の前に広がる青い炎が私を取り囲むようにして燃え上がる。
ノロノロしていた結果は火を見るより明らかだったけれど、むしろ結果が火そのものですらある光景だ。
驚き竦み上がる私が身動きできないまま首だけを後ろへ向ければ、勝ち誇った顔で狸ちゃんが仁王立ちをしていた。
「オレ様の鼻から逃げられると思ったか!ニンゲンめ!」
周囲には巨大な本棚。前門には迫り来る青い炎。後門には喋る狸ちゃん。
万事休す。四面楚歌。背水の陣。
ああ、夢なら早く醒めて……!