第1章 出会い
先程まで吐いていた炎はもちろん、文字通り手も足も出ない狸ちゃんの状態を少しだけ気の毒に感じる。
そんな私の密かな同情は無論、狸ちゃんにもお構いなしな仮面の男性は、私の目の前まで来るや否や、仮面の目元で光る金色の球体に弧を描く。
ちょうど目を閉じていることを思わせる形だ。
仮面をつけていて顔の全貌はわからないのに、への字に下がった口元から発せらられる声色と相まって、こちらに対して呆れているのだと伝わってくる。
「まったく。勝手に扉を開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!」
これ見よがしな溜息の後、どれだけせっかちさんなんだとお説教をされてしまう始末。
そんなことを言われても私には何のことだか全くわからないので、首を傾げっぱなしである。
目が覚めたら青い炎に襲われて、知らない場所にいて、しゃべる狸ちゃんに追いはぎされかけて、今度は仮面をつけた不審な男性にせっかちな新入生扱いをされ、怒られているのだからクエスチョンマークがいくつあっても足りない。
ここがどこで、アナタはだれで、私は一体どういうポジションの夢なのかしらー。
夢に理由を求めるのはナンセンスかもしれないけれど、理不尽な目に遭えば、理由の一つくらい求めたくもなるというもの。
すっかり困り果てている私のことなんて、まるでお構いなしに仮面の男性は私を急かす。
「さあさあ、とっくに入学式は始まっていますよ。鏡の間へ行きましょう。」
「……?……新入生?」
扉?鏡の間?入学式?相次ぐ私の疑問符を可視化したみたいに仮面の男性は「貴方が目覚めた、たくさんの扉が並んでいた部屋ですよ」と教えてくれる。
微妙に私の呟いた疑問の答えにはなっていないけれど……どうやら鏡の間と呼ばれる入学式の会場に向かわなければならないらしい。
たくさんの扉が並んだ部屋の心当たりを探ってみたら、あの棺がいくつも浮かんだ部屋の光景に辿り着いた。
ひょっとして、棺のことを『扉』と称しているのかしらー?