第6章 雑用係
「…………」
今なお燃えている廊下を一瞥し、学園長先生へ視線を戻す。
そうして、私は素直に頭を下げた。
本当なら一番最初にやらなければいけなかったことだった。
「大事な寮を燃やしてしまって、ごめんなさい。――ほらグリムちゃんも」
「えぇ~?なんでオレ様まで謝んねーといけねーんだゾ?全部オマエがやれって言ったんじゃねーか」
「そうだけど、でも悪いことをした時は『ごめんなさい』って言わなくちゃ」
もちろん実行するよう指示を出したのは私だから、全面的悪いのは私だ。
そこを違えるつもりはない。
グリムちゃんの言い分だって正論である。
けれど、これは決してグリムちゃんに責任を押し付けるために謝罪を強要してる訳じゃなくて……どちらかというと誠意を示すためのものだった。
それに、あの試練は私たちが一緒にやったことだから。
だから一緒に謝ろう――私がそう言うも、グリムちゃんは「ヤなこった」と、そっぽを向いてしまう。
「……ツナ缶いらないの?」
耳打ちすると、ハッと真ん丸お目目をさらに丸くさせたグリムちゃんが私を見上げてくる。
この現状は、ある意味ツナ缶のために払った犠牲の結果だ。
ツナ缶は、最早グリムちゃんにとっての重要事項。
彼の中では今この瞬間、絶対に謝りたくない気持ちの反対側の天秤に『ツナ缶』という錘がずしりと乗っかったことだろう。
「ごめんなさい」の一言を紡ぐことでツナ缶ゲットに繋がるかもしれないとなると、ぐらつく気持ちが「ぐぬぬ」と唸る顰めっ面に大いに表れていた。
プライドとツナ缶。
どちらを取るべきか悩むグリムちゃんが知らず袖に爪を食い込ませてくる。
私は両腕でグリムちゃんを抱え直して、もう一度深く頭を下げた。
「本当にごめんなさい。グリムちゃんと一緒に反省してます」
私が腰を折って頭を下げれば、腕の中に抱えたグリムちゃんの顔も見えなくなる。
きっと傍から見れば、ふたり揃って頭を下げて反省しているように見えることだろう。
実際に頭を下げているのは私だけで、グリムちゃんは結局謝ることはしなかったけれど、これはこれで結果オーライだ。