第6章 雑用係
一度目のゴースト退治は、立派な正当防衛だった。
多少の被害は許容の範囲内に収まって然るべきだろう。
が、二度目の学園長先生の試練に関しては、こちらが意図して起こした火災であり、その後のことよりも勝つことを優先した結果がこれである。
困ったわねぇ、と独り言ちると、仮面の目元で光る金色がジロリと音を立てるようにして私とグリムちゃんに向けられる。
鋭い眼光が飛んできて、グリムちゃん共々ギクリと身を強張らせた。
すかさずグリムちゃんが「お、オレ様は悪くないもんね!コイツが言うから仕方なくやったんだゾ」と弁明し、肉球をタシタシと私の腕に叩き付ける。
「コイツだって最初はここを燃やすなーって言ってたのに」
「だって、ああでもしないと勝てそうになかったんだもの」
フォローになりそうでならないことを言い訳の延長で告げたグリムちゃんと、同じく子供みたいな言い分で決行の理由を口にする私。
実際グリムちゃんを勝たせるには、こうするしかなかった。
少なくとも、私の中では。
今度こそツナ缶をグリムちゃんにあげる約束もしていたし、あの時は背に腹は代えられなかったとしか思えなかったのだ。
もちろん火事を起こしてしまったことへの罪悪感はある。
けれど、それと同じくらい、勝つために自分で選んだあの手段を"間違いだった"と切り捨ててしまうことにも妙な抵抗があった。
だって、勝てたことは本当に嬉しかったのだ。
そのプロセスの中に在る、グリムちゃんと結べた連携の余韻にも嘘を吐きたくない。
ここを燃やすのは覚悟の上だったので、この自己満足のために借り物の――それも相当な年代物の建物に火事を齎したことを咎められても、甘んじて受け入れるべきだろう。
ひょっとしたら私もグリムちゃん共々追い出されてしまうかもしれない。
だとしてもだ。
とはいえ、それも後の話。
現状の火事の始末についてを考えようとして、そういえばお掃除の時に水道からほとんどお水が出てこなかったことを思い出す。
長らく使われていなかった寮だから、水回りの整備が行き届いていないのも仕方ないことだった。
となると、水を汲んできて消火というのも出来なさそうだ。