第5章 試練
「ぜぇ、はぁ……っ、お、オマエの言う通り思いっきりやってやったんだゾ!こっからどうすんだ?」
「これでもう逃げ場はないはずよー。学園長先生が出てきたら、今度こそ攻撃を当てて終わらせましょう。もうちょっとだから頑張って、グリムちゃん!」
「ふな……寮を燃やすなって言ったり、燃やせって言ったりメチャクチャなんだゾ」
「ごめんね、グリムちゃん。でも、これもツナ缶のためよー」
"思いっきり"の言葉通り、全力で炎を出し切ってくれたことで息を切らしながらグリムちゃんが私を不満げに見上げてくる。
のんびりと苦笑を返せば、ますますグリムちゃんの目付きがジトーっとしたものになった。
このとき、私は二重の意味で内心驚いていた。
最初のゴースト退治の時、私がグリムちゃんに「せっかくできた居場所を燃やさないで」と懇願したのを、この子が何気に覚えていてくれたこと。
その私がグリムちゃんに火事を起こすよう指示したことについて、グリムちゃんからお小言を言われてしまったこと。
てっきり私にも、私の仮住まいのこの居場所にも興味なんてないとばかりに思っていたから、グリムちゃんが――"文句"という態でも――意識の範疇に置いているのだと知って、なんだか少しだけ嬉しかったの。
……でも、私も覚悟を決めたから。
私がグリムちゃんの力になりたくて励んでいるのだから、グリムちゃんも最後まで私のメチャクチャに付き合ってもらうつもりよー。
すべてはツナ缶のため――と正直に言ってしまうと、あまりにも被害の大きさが割に合っていないけれど、これが今の私に立てられる最善策だった。
愚策と同列のそれをグリムちゃんは渋々といった感じで受け入れてくれたらしい。
「ま、オレ様はオマエの住む場所がなくなったって関係ないけどな!」とシニカルに片目を細めて生意気に言い放つ姿は、慣れ親しんだ頼もしさのような、清々しいような割り切り具合を感じられた。あらまあ。
あとは学園長先生が出てくるのを待つだけだけれど、いつどこに現れるかはしっかり見極めないと――と、燃え上がる周囲に目を配った矢先。
『ちょっと!なんです、この有様は!?寮が火の海じゃありませんか!』
天井近くの壁から現れたゴースト姿の学園長先生の驚愕に塗れた声が、燃える廊下に響き渡る。
おかげで探す手間が省けたわー。