第5章 試練
鏡の間では、炎を消すことで相手の逃げ隠れする場所を奪っていたけれど――私たちは、逆に炎で相手を閉じ込めて逃げ道を奪う。
この作戦が上手くいけば、今度こそ私たちは学園長先生を丸焼けにすることができるはず……!
「ふ~~な゛ぁ~~!!」
ゴウ、と音を立てて青い火炎がたちまち床を這う。
"思いっきり"という私の言葉通り、一切の遠慮がない目一杯の炎の量。
さっきまで上手くいっていなかった鬱憤も大いに込められたグリムちゃんの炎は、いっそ勢い余って壁まで燃え広がり、床どころか前方に見える廊下全体が揺らめき輝く青に覆われていった。
「あらー……」
なんだか、思った以上の火力ねー……。
立ち込めた熱気が押し寄せ、木材が焼けてパチパチと音を立てながら火花がいくつも弾ける。
天井すらも徐々に炎で埋め尽くされていき、まるで大きな松明の中にでもいるような有様だった。
ちょっとやりすぎちゃったかしらと思わなくもないけれど、背に腹は代えられない。
幸い、まだ外の雨は止みそうにないし……この試練を早めに終わらせれば、被害も幾分か抑えられるはずだ。
……たぶん。
保証はないから気休めにもならないかもだけれど、勝つ見込みがあると断じて決行する以上は最後までやりきるしかないわ。
続けて反対側の廊下にも炎を吐いてもらい、青々と輝く火炎の大波が廊下一帯を埋め尽くす。
鏡の間と違って、古くなった木材で主に構築されているボロボロの寮の廊下は、熱に耐え切れずあちこちが裂けるようにして各所の一部が崩れ始ていた。
そこから雨風が入り込んでくるけれど、燃え上がる勢いの方が勝っている。
かろうじて壁に掛かっていた状態の額縁が漆喰が剥がれ落ちると同時に落下し、ガタンと音を立てながら火の波に呑まれた。