第5章 試練
『おふたりとも、しっかりなさい。このままだと私に勝てませんよ?負ければツナ缶もお預けです。私、残念ながらそこまで優しくはないので』
「ふな゛っ!?嫌だゾ!オレ様はツナ缶が欲しいんだ~!おいオマエ!この勝負、絶対勝つんだゾ!グリム様のツナ缶のために!!」
「そうしてあげたいのは山々だけど、目で追うのが難しいのよー……!」
さっきのゴーストたちだって、ここまで速くは動いていなかった。
しっかり狙いを定めなければいけないのに全然上手くいかなくて、焦りと同時にグリムちゃんへの忍びなさも降り積もっていく一方である。
私だって、この勝負に勝ってグリムちゃんにツナ缶をあげたいし、入学のチャンスも見事もぎ取って喜ばせてあげたい。
そのためには、より正確で的確な指示が必要だった。
今よりもっとグリムちゃんとの"コンビネーション"も高めなければ、勝機はない。わかっているのだ。
でも、どうしたら……。
「ふな゛ぁああっ!」
「!」
私の指示を待たずに炎を吐き出したグリムちゃん。
向こう見ずに放たれたそれは、最早溜まりに溜まった苛立ち発散の一環でもあった。
……けれど。
『!おっと』
「!!ふなっ、今だ~!」
偶然にもグリムちゃんが吐いた炎の前に姿を現した学園長先生が、目の前にあった炎の壁に身を翻し損ねたのだ。
その隙を狙ってグリムちゃんがもう一度炎を吐くも、炎が届くより学園長先生の姿が掻き消える方が一足早かった。
『ふう。いやあ、危ないところでしたねえ』
ふよふよと天井近くを漂いながら、額を手の甲で擦るような仕草を見せる学園長先生。
幽体だから汗なんてかいていないのに、それっぽいポーズだけ見せられるから、グリムちゃんが煽られたとばかりに「ふな゛ぁぁ!ちょこまか動きやがって~!」と叫んだ。
一層毛を逆立てて、癇癪一歩手前といった感じで地団太を踏むグリムちゃんを見て、私はますます焦りに駆られた。