第5章 試練
あっちこっちに忙しなく視線を動かしては学園長先生の動きを追おうとするも、中々肉眼では捉えられない。
元々、反射神経は良い方ではないのだ。
廊下の向こう側で視認した姿目掛けて狙いを定めても、猛スピードで一気に距離を詰めてきた学園長先生がそのままグリムちゃんの真横を通り過ぎていってしまって、攻撃を撃つ頃には反対側にいたり。
視界の端を掠めた白い影に対して"見つけた"と思っても、それはあまりのスピードで過ぎ去った学園長先生の残像であり、本人はまったく別方向で優雅に腕を組んで浮いていたり。
私が翻弄されれば、必然的にグリムちゃんにも悪影響が出てしまう。
合っていたと思い込んでいた呼吸は、瞬く間に乱されていた。
さっきまで調子が良かっただけに、崩されたペースに対する焦燥はひとしおだった。
この状況にも。
そして、お互いにも言い知れないもどかしさが募りゆこうとする。
痺れを切らすまでのカウントダウンをフライングしたのは、グリムちゃんだった。
「ううう~!おい、オマエ!なにが"オレ様とオマエにかかれば"だ!さっきから全然当たんねーんだゾ!」
「わ、わかってるわよー……あっ!次は後ろ!すぐ後ろにいるわー!」
「ふんな゛ぁ!」
『残念、またハズレましたねぇ』
グリムちゃんの背後にいたはずの学園長先生が、あっという間に反対側に回り込む。
またしてもグリムちゃんが吐いた炎は、虚空を焼き焦がしただけに終わってしまった。
学園長先生が不敵に笑う声まで二重、三重に響くようにして消えていく。
「右――じゃない、あっ、待って、今度は左……!」
言っているそばから、また消えた。
これじゃあ、いくら位置を教えても間に合わないわー……っ。
焦れば焦るほど視線が泳いで、ますます学園長先生の姿を捉えられなくなっていく。
グリムちゃん自身も自分で狙いを定めて何度か炎を放っているものの、当たらなければ魔力と体力を消費する一方だった。加えて、焦れったさも相まってムキになればなるほど、がむしゃらな動きは増えていく。
学園長先生の掌の上で、私たちは負のループに陥っていた。