第5章 試練
『な、なかなかやりますねえ。本当に手加減なしで来るとは……いえ、別に怒っていませんよ。私、優しいので』
「はいっ。ちゃんと丸焼けに出来るよう、がんばりますねー」
「オマエが遠慮するなって言ったんだゾ!くらえー!」
『ちょっとぉ!?私、丸焼けにしろとまでは言ってませんよ!?』
出だしは好調。この調子でグリムちゃんと連携して学園長先生を上手に丸焼けにすべく、私は「右側に逃げたわよー!」と声を出す。
おう!と、意気揚々と返事したグリムちゃん。
四つ足で駆け出して学園長先生を追いかけながら、青い火の玉をぶつけに掛かった。
先程のゴーストたちを相手にしていた時と、状況はほとんど同じ。
違いがあるとすれば、さっきはゴーストが複数いたのに対して、今は学園長先生一人だけ。
誰を狙えばいいのかわからなくなることもないし、見つけ易いのはこちらにとっての利点だった。
それにグリムちゃんの動きも格段に違う。
相手が本物のお化けじゃないから、怖がる必要が全然ないのだ。
おかげで、炎を出すとき目を閉じなくても良くなったのは大きい。
立ち姿にも、どこか強気な余裕が透けて見える。
頼もしいわねー。
私が位置を伝えれば、グリムちゃんはその情報を頼りに自分で身体を動かして炎で攻撃をする――。
学園長先生相手に自分の炎を当てることが出来て、グリムちゃんもきっと手応えを感じていることだろう。
アチアチと焦る学園長先生に向かって肉球を掲げ、にゃははと笑う姿は楽しそうだ。
……私も、実を言うと同じ気持ちだった。
もちろん学園長先生が丸焼けになることを喜んでいるわけではなくて……グリムちゃんが、私の言うことをちゃんと聞き入れて動いてくれることに対して、達成感にも似た喜びが胸をほんのりとあたためている。
少しだけ、息が合ってきた。
少しだけだけど、グリムちゃんが私に信頼を向けてくれてるのかもしれないって思えたから、私も――ほんのちょっとだけ、この状況が楽しいような気がしていた。