第5章 試練
「さっきグリムちゃんは、私のこと助けてくれたもの。だから今度は、私がグリムちゃんの手助けをさせて。頼りないかもしれないけど、精一杯力になるわー」
「――――これで最後なんだゾ!今度こそ絶対絶対、ツナ缶よこすんだゾ!?」
「うんっ!」
話は決まりだ。腹を決めたグリムちゃんが可愛いピンク色の肉球がついた両手を掲げる。
ファイティングポーズで、かかってこい!と勇む彼をゴーストとなった学園長先生が優雅に見下ろし、よろしいと頷いた。
『遠慮なく攻撃してください。大丈夫、怒ったりしません。私、優しいので』
「よし、オマエ!アイツの居場所を、しっかりオレ様に教えるんだゾ!」
「任せて、グリムちゃん!」
私もグリムちゃんを見習って両手に握り拳を作る。といっても実際に掛かってこられるのも撃退するのもグリムちゃんだから、本当にポーズでしかないのだけれど。
では、始めますよ――と告げた学園長先生が、言葉の終わりと同時に姿を消した。
瞬きの合間を縫うようにして、グリムちゃんの背後に音もなく現れた白い影を見て「後ろよー!」と声を上げる。
燃えるお耳をピクリと大きく揺らしたグリムちゃんが振り返り様に、窄めた口から青い炎を噴き上げた。
私の指示に従うのは嫌だと言いながらも、いざとなったら ちゃんと動いてくれている。
さっきのゴースト退治が功を成しているおかげだ。
おお、と学園長先生が驚いたような声を出しながら半透明の身体をさらに透けさせたことで、間一髪のところで炎は躱されてしまった。
そうして次はやや離れた上方向に姿を現した為、指を差して上にいると言えば、私の指先が示す方向を確認してから「あそこだな!」と炎を吐いた。
豪快なアーチを描く青い火炎は、学園長先生の片腕を思いきり掠めていった。直撃こそ免れたものの、消えるタイミングを逃した学園長先生は熱さに惑い、息を吹きかけながら手の甲をさすり始めた。
実体を持たない透けた手にそんなことをして果たして意味があるのかわからないけれど、熱さが感じられるのだから気休めくらいにはなるのかもしれない。
何であれ、動きが完全に止まっている今がチャンスとばかりに追撃の指示を出せば、意地悪な顔で火炎を放つグリムちゃん。
真正面からグリムちゃんの炎を浴びることとなった学園長先生が「あちちちち!」と、本気で焦った声を上げた。
