第5章 試練
私の新鮮なリアクションにひとしきり満足したところで、では早速はじめましょうかと腕を広げた学園長先生。
どこからでもウェルカムの体勢が取られたところで「えぇ~」という不満の声が私の足元から上がる。グリムちゃんだ。
「嫌なんだゾ。めんどくせーし、またコイツと一緒になんて……」
「あらまあ、グリムちゃん……」
どうやら仲良くなれた気でいたのは私だけのようで、グリムちゃんはこれっぽっちも私に対して興味がなさそうだった。
力を合わせてゴーストを退治して、お夜食だって分け合った仲なのに、この言われよう。
まあ、現実の動物とだって仲良くなるのに時間は掛かるものねー。
グリムちゃんはモンスターで、言葉だって人間みたいに交わせるけれど……だからといって、この短時間で心を開いてくれるかどうかはまた別問題だ。残念だけれど、仕方がない。
グリムちゃんは、ゴーストに変身した学園長先生を見てもノーリアクションどころか、じとーっと半目になって、いかにも面倒そうな態度を隠しもせずにブーイングを繰り返している。
ゴースト退治なんて介さずにツナ缶をそのまま差し出してくれた方がよっぽど嬉しいらしい。
が、そうは問屋が卸さないから、ますます不満そうに尻尾が揺れている。
だるそうに溜息を吐いて、お耳をぺたりと下げるグリムちゃんの隣にしゃがみ、なるべく視線が合うように顔を覗き込む。
「そんなこと言わないでグリムちゃん。ほら、よく考えてみて。ひょっとしたらこの学園に入学できるチャンスかもしれないわよー?」
それに頑張って実力を示せば、もれなくツナ缶もゲットできるのだから一石二鳥に違いない。
グリムちゃんがこの学園にやってきたのは、大魔法士になるため。
闇の鏡に見初められなかったグリムちゃんが何度学園に侵入しても、また追い出されるのは目に見えている。
なら、この学園のトップたる学園長先生が提示した条件を見事クリアして、直々にOKを貰うことが出来れば、入学だって夢じゃないかもしれない。
イイこと尽くしだと語る私の話に耳を傾けていたグリムちゃんが「ぐぬ……」と唸る。
プライドと面倒な気持ちとが織り交ざって葛藤しているらしいグリムちゃん。
悩みに悩んで、私の顔をチラリと横目で見上げてきた。
向けられるジト目に、のんびりと笑い返す。