第5章 試練
とはいえ、グリムちゃんがいるとは夢にも思わなかったから当然、食事は私の分しかない。
だから腹ペコだと訴えたグリムちゃんと半分こすることにしたのだけれど「ゴーストを追っ払ったのはオレ様なんだゾ!」というグリムちゃんの尊大な態度による主張によって、私の取り分は半分――というには些か少ないものとなってしまった。
実際、グリムちゃんの炎の魔法に助けられたのは紛れもない事実。
グリムちゃんの言い分は最もであると素直に頷いた私は、取り分の偏りも構わず快く分け合うことにしたのだ。
結局、パンは三分の一ほどを私が、残りはグリムちゃんのお腹へ消えていった。
スープも、冷めてしまう前にと半分ほど口にしただけで、後はみんなグリムちゃんが美味しく頂いた。
チーズやリンゴを「これも全部オレ様の分なんだゾ」と抱え込む姿が可愛くて、のんびり笑いながら「もちろんいいわよー」と快諾した途端、目を輝かせてチーズを一口で頬張ったグリムちゃん。
あらまあ、一口がとっても大きいのねー。ふふ。
頬袋がないはずなのに、ほっぺたをハムスターみたいに膨らませて、もぐもぐハグハグとがっつく姿が微笑ましい。
小さな身体のどこに入るのかと思うほどの食べっぷりだ。
どうやら随分、食いしん坊さんみたい。
それとも、それだけお腹が空いていたのかな。
学園であれだけ暴れて、その後に雨の中を一人で歩いて、寒い思いもして、それからゴースト相手にあれだけ頑張ったのだから当然かもしれないと思うと、もっとたくさん食べてほしいとすら思えてくる。
「美味しい?グリムちゃん」と問うと、リンゴを丸齧りしながら「シャクッとした歯ごたえと溢れ出すフレッシュな果汁が、後から追ってくる爽やかな酸味と一緒に鼻の奥を心地よく抜けるんだゾ~」と、思いのほか饒舌な食レポを返してくれたのでびっくりした。
グリムちゃん、ご飯に関するお喋りが上手なのねー。
さっきまでゴーストを前に震えていたのに、もうすっかり調子を取り戻しているみたいで何よりだと、頬に片手を当てながらグリムちゃんの食事を微笑ましく見守る。
そんな私たちを見下ろしながら、学園長先生は何やら考え込むように顎へ手を添えていた。