第4章 ゴースト退治
さっきまであれほど騒がしかった廊下に雨音だけが静かに館へ降り注ぐ。
恐る恐る目を開けたグリムちゃんがきょろきょろと辺りを見回し、白い影がどこにもないことを確認すると、青い目をぱちぱちと瞬かせた。
「あ、あれ?勝っ……た?」
「グリムちゃんっ!」
そんなグリムちゃんの元へと駆け寄って、その小さな身体を勢いよく抱き上げる。
彼は驚き半分、まだ信じられない気持ち半分といった顔で、炎を出し続けたことによる疲労で全身を小刻みに上下させながら私を見た。
「すごかったわー!ありがとう、グリムちゃん!頑張ったわねーっ」
もうゴーストたちはいなくなったわよーと笑いかければ、ようやく張り詰めていたものが切れたのだろう。
抱き上げた瞬間はまだ身体を強張らせていたグリムちゃんが、安心した途端に力を抜いて腕の中へ身を預けてくる。
慌てて抱き直すと、さっきまで暴れ回っていた小さな身体が思いのほか重たく感じられた。
くたりと垂れた耳に宿る炎の揺れもずいぶん弱々しいけれど、これは立派に戦い抜いた証拠だ。
「ハヒ、ヒィ……こ、怖かっ……」
そこまで言って、グリムちゃんはハッと口を押さえる。
「――――いや、ぜんぜん怖くなかったんだゾ!」
「うんうん、そうねぇ」
「グリム様にかかればチョロいんだゾ!どうだあ、お化けめ!参ったか!」
「うん。グリムちゃん、強い!すごい!えらい!それに、とってもカッコよかったわーっ」
初めこそ目を開けられないせいで攻撃が当てられないくらいだったけれど、逆に言えばそれくらい怖くても頑張って戦ってくれたということだ。
勇ましかったと賛美する私の腕の中で、褒められて満更でもなさそうに尻尾をフリフリするグリムちゃん。
そんなにオレ様を褒めたいなら、もっともっと褒めてもいいんだゾ!とふんぞり返る姿はまるで小さな王様だ。
気分の良さが耳の炎が燃える勢いを少しだけ強くさせている。
こうしてみると、やっぱりカワイイの方が似合う気もするけれど、グリムちゃんのおかげで一難が去ったのだからお望み通り、もっともっと褒めなくちゃねー。
私ひとりじゃ何もできなかったもの。
だからグリムちゃんがいてくれて本当によかった。
そう思った瞬間だった。