第4章 ゴースト退治
ふよふよと私の目の前で漂う半透明の影のうちの一体が伸びのある声で語り掛けてくる。
『ここに住んでいた奴らは俺たちを怖がってみーんな出ていっちまった』
『俺たち、ずっと新しいゴースト仲間を探してたんだ。お前さん、どうだい?』
一番ふくよかなシルエットをしたゴーストに近寄られ、私はとっさに脚にしがみつくグリムちゃんを抱きしめた。
仲間を探していた?
お前さん、どうだい?
それってつまり、死んで仲間になれってこと……!?
「い、いやよ!助けて!」
「うううっ、ううーーっ!」
グリムちゃんを抱き込んだまま後ずさろうとするも、既に逃げ場はない。
左右と目の前をゴーストたちに塞がれ、私たちは絶体絶命の危機に直面していた。
腕の中のグリムちゃんは、式典服の袖に爪を食い込ませるほど前足を握り込みながら涙目でプルプル震えている。
このままでは、ゴーストたちに幽世へ連れて逝かれてしまうのだろうかと万事休すを味わいかけた――その時。
「大魔法士グリム様はお化けなんか怖くないんだゾ!!!」
恐怖が限界値に達したことによる反発か、はたまたパニックの一環か。
啖呵を切ったグリムちゃんが腕の中から飛び出すと、口から青い炎を噴き上げた。
こ、これならさすがのゴーストも怯んでくれるかもしれない……!
そう思ったけれど、やっぱり実体がないせいなのかゴーストたちはケロリとしている。
どこを狙ってるんだ、こっちだこっちとグリムちゃんを煽りながら、ゆらゆらと虚空を漂うゴーストたち。
すうっと音もなく見えなくなってしまったかと思いきや、次の瞬間にはグリムちゃんの真横に現れて「ばぁ!」と両手を上げて驚かせるものだから、グリムちゃんも青い目をキッとつり上げた。
「ちくしょー!出たり消えたりするんじゃねー!」
今はもう恐怖よりも苛立ちが上回ったようで、アイツらに絶対炎を浴びせてやるんだと意気込んで青い炎を唸らせる。
けれど、吐き出された火炎玉はゴーストに掠りもしない方向へと飛んでいった。
廊下に当たって弾けるようにして散る青い火炎。
こうなってしまえば最早ランプの明かりなんて必要もないくらい青々と揺らめく明かりと共に充満する熱気。焦げた匂い。