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鏡の世界の×××

第4章 ゴースト退治



等間隔に並ぶ扉のうち、とりあえず一番手近な部屋を調べてみようとドアノブに手を伸ばした――途端、ふいに目の前が白んだ。

それは、立ち込めた煙が腕をすり抜けていったように。
感触がないはずのに"触れた"と何故だか直感的に感じられた瞬間、身の毛がよだつ陰気を覚えて、ひっ、と息を呑んだ。

同時に持っていたランプの明かりが突然、消える。

『ひひひひ……イッヒヒヒヒ……』
『ひさしぶりのお客様だあ~……』
『腕が鳴るぜぇ~』

どこからともなく聞こえてくる声。
私を取り囲むように目の前を過ぎていく白い影。

語尾を震わせて笑う声は、愉快そうに私の鼓膜を撫でつけた。

驚いて固まる私の目の前に現れた白い影は、一つではない。
二つ、三つ……。

それが何なのか理解するより先に、そのうちの一つがその眼に私の顔を映し込む。


目が、合った。


「キャーーーー!!」

「なにを大騒ぎしてん……ギャーーーーーー!!!おおお……お化けえええええ!!!」

私の悲鳴を聞きつけて談話室から飛び出してきたグリムちゃんが、私の周りに浮かぶ三つの白い影を見つけた瞬間、私の倍以上の声量で悲鳴を上げる。
耳の先に灯っていた青い炎が驚きに反応したのか、一瞬だけ勢いよく燃え上がった。

どうやらこの白い影は私の恐怖から来る幻覚ではなく、彼にも視認できるものらしい。

それはつまり、グリムちゃんが叫んだ言葉の通り――お化けが、ここに存在しているという事実に他ならなかった。

先刻まで「オレ様は大魔法士になる天才なんだゾ!」と胸を張っていた威勢はどこへやら。
黒い毛並みをぶわりと逆立たせ、さながら"やんのかステップ"をする猫の如く背中を大きく膨らませたグリムちゃん。

けれど、それはゴーストへ立ち向かうための威嚇ではなく、ただ純粋な恐怖の表れだった。

そして、鏡の間で私を追い回していた時とは比べものにならないほどの俊敏さで私の足元へ飛び込んでくると、壁に背を張り付ける私の脚に前足をぎゅうっと回してきた。
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