第4章 ゴースト退治
そうこうしている間に、今度は私の肩や頭に数滴の玉粒が落ちてきた。
窓の外を見る限り、雨の強さは一向に変わらず、止む気配も当分なさそうだ。
「のんびりしてる場合じゃないみたいねー。バケツ見つけてこないと」
よいしょと立ち上がり、グリムちゃんに「ここで待っててね」と告げるも、どうやら言われなくてもグリムちゃんは動く気はなかったらしい。
水滴が落ちてこない場所にだけ移動して、ぶるぶると顔や身体を振るって水分を飛ばしていた。
狸でも猫でもないけれど、仕草が完全にシャワー後のワンちゃんのそれである。可愛い。
学園長先生の置き土産のランプを片手に廊下に出ると、雨が降っているせいか空気が一段と冷たく感じられた。
水を吸った古い木材や、カビや埃の匂いが湿った冷気を助長させている。
入った時は床が抜けたりして、明かりを持つ学園長先生の後ろをついていくのに必死だったからよく見ていなかったけれど、この廊下も随分と不気味ねー。
壁に浮かぶ無数のシミや罅割れの跡。所々小さく剥がれた漆喰から木材が顔を覗かせている。
掛けられている――といって良いのか微妙な角度とバランスだ――額縁にランプを翳すも、かなり埃を被っていて絵の内容は判別し難かった。
それが却って、ここの薄気味悪さに拍車を掛けている気がする。
本来なら寮の品格を彩るための敷物だったのだろう、立派な紋様が織り込まれた絨毯は、無造作に放り捨てられたようなズレ方で床に敷かれていた。
廊下の奥には、二階に続く大きな階段がある。
一階にバケツか代わりになる物がなければ、二階まで探しに行くことになるだろう。
ホラー映画のセットと言われても納得できてしまう要素しかない建物だと、つくづく思う。
何気なくジッと廊下の先を見つめていると、そのうち暗闇の向こうから居もしない誰かがこちらを見返してくる錯覚に陥ってしまいそう。
吹き抜ける風の音。
打ち付ける雨の音。
歩くたびにギシギシと床板が軋む音。
静まり返っているとは言い難いけれど、打ち響く様々な音色は、恐怖心を煽るには十分過ぎる。
丑三つ時というし、今にも何かが出て来そうねー。
なんだか怖いし、グリムちゃんも待っているし、はやくバケツを見つけて戻らないと。