第4章 ゴースト退治
私の疑問に対し、グリムちゃんは意地悪に尖らせていたお目目を真ん丸にして、単純な話だと答えを返した。
「オレ様が大魔法士になるべくして生を受けた天才だからなんだゾ!」
「わあー。ふふ、カッコイイわねぇ。たしかにグリムちゃんの炎、すごかったものねー」
「だろ!」
ドン!という効果音を背負っているかのような堂々たる物言いで理由を言い切ったグリムちゃんに拍手を送る。
気分としては、将来の夢を"宣告"として自信満々に公言する小さな子供を見守るそれだ。
微笑ましさを満面に乗せながら感心する私の賛美に、グリムちゃんは青いお目目をキラキラさせる。かわいい。
……が、それも束の間だった。
ピンと立っていたお耳が真横に傾き、次第にうつむいていくグリムちゃんの様子に「あらあら、どうしたの」と声を掛ける。
「いつか黒い馬車が迎えに来るのをオレ様はずっとずっと待ってた。なのに……なのに……」
「ぐ、グリムちゃん……っ」
この様子では、黒い馬車はグリムちゃんの元には訪れなかったようだ。
何気なく繰り返された「ずっと」という言葉。
あんなに大騒ぎして、威勢ばかり良く見えたグリムちゃんにも、そんなふうに待ち続けていた時間があったのだと思うと、なんだか切ないものを感じてしまう。
闇の鏡に選ばれなかったら生徒として認められない仕来りがグリムちゃんにとっては仇でしかなかったのだ。
話すうちに青いお目目が潤んだのを見て「あらあら……っ、泣かないでー」と私が雑巾の余りの布を差し出そうとしたけれど、すかさず「だから!そんな埃塗れの布でオレ様の顔を拭くんじゃねえ!」と払い除けられてしまった。
そもそも泣いてなんていないんだゾ!と、強がりだとしても否定されては手を引っ込めるしかない。
それでも心配する気持ちは晴れず、「大丈夫?」と私が顔を覗き込んで問いかけると、ごしごしと少し乱暴に前足で目元を拭ったグリムちゃんがプイっとそっぽを向く。
「ふ、ふん!闇の鏡も見る目がねーんだゾ。だからオレ様のほうからきてやったってわけだ」
「そっかぁ。でも、どうしてグリムちゃんじゃダメだったのかしらー?」
魔法が使えたら誰でもいいわけじゃないのかなぁ。
そういえば、優秀な魔法の資質の持ち主にだけ黒い馬車が来るって学園長先生が話していた気がする。
ただ魔法を使えるだけではダメということなのかもしれない。
