第3章 オンボロ寮
「私は調べ物に戻りますので、適当に過ごしていてください。学園内はウロウロしないように!では!」
「はーい、わかりましたー」
ご機嫌ようー、と手を振り、出ていく学園長先生を見送る。
ちなみにランプは持っていかれてしまった。
けれど、「ああ、そうでした」と途中で思い出したらしい学園長先生がすぐに戻ってきてくれて、室内に備え付けられていたランプに明かりを燈してくれたので、事なきを得た。
「私、優しいので」と、わざわざ戻ってきたことを指して言った学園長先生に「はいっ、ありがとうございます!さすが学園長先生だわー」と心からのお礼をのべれば「そうでしょう、そうでしょう」と満足そうに頷きながら、今度こそ館を出て行く。
バタンと扉が閉められた音がやけに大きく響き渡り、衝撃で近くの燭台がドミノ倒しみたいに転倒していった。
あらまあ。
「……それにしても、本当にあちこちボロボロだわー」
改めて、ぐるりとお部屋を見渡しながら呟いた。
学園長先生がいなくなった後だからこそ、趣があるにも程がある館の感想が、より素直に口から出てしまう。
明かりが点いたら、荒れ放題のお部屋の様子がますます目に鮮やかだったのだから仕方ない。
深い緑色の壁紙は所々黒く変色していて、湿気に侵された跡が天井から幾筋も垂れ落ちていた。
壁には幾枚もの絵画が掛けられており、そのどれもが大きく傾いていたり、今にも落ちそうにぶら下がっていたり――あるいは、すでに床に横たわっているものもある。
描かれている人物や風景は、汚れが激しくて詳細はほとんど読み取れなかった。
奥には床から天井近くまで届く、大きな窓。
きっと元は真っ白に透けていたに違いないカーテンは、すっかりくすんでしまっている。
隙間風でカーテンの裾がそよぐ様子は、ボロボロの室内効果によって、お化けがそこにいることを錯覚させた。
部屋の中央には、散乱した家具。
木製の椅子は倒れ、テーブルはひっくり返って天井に脚を向けている。
白と黒の縦縞模様のソファは、すっかり生地が色褪せてしまっており、雨漏りの跡らしき大きな染みも浮かんでいた。
一休みに腰掛けようにも憚られる汚れ具合だ。