第3章 オンボロ寮
部屋の隅には立派な暖炉が据えられていた。
黒ずんだ炉には火の気はなく、埃なのか灰なのか判別のつかない山が積もっている。
暖炉があるお家って可愛くて憧れていたから、ちょっと嬉しかったのはここだけの話だ。
猫ちゃんがいれば、きっと暖炉の前が一番のお気に入りになりそうねー。ふふ。
この暖炉が活躍していた嘗ては、暖を囲んだ住人たちの笑い声があたたかく響いていたのかもしれない。
この寮、どれくらい放置されていたのかしらー。
人気も生気も感じられない。
食べる物もないだろうから、鼠すら住み着いていなさそう。
強いていうなら、あちこちに巣を構えた蜘蛛がもはや大豪邸を築き上げていることくらいかしらー。
長い長い年月、置き去りにされたお屋敷に広がる寂寞。
"物静か"と言いたいところだけれど、高い音を立てて吹き込む隙間風でカーテンが囁くように揺れて、壁や床が勝手に軋む音がたびたび鳴り響いている。
「……真っ白な埃が雪景色みたいねー」
時折、パラパラと天井から降ってくる埃が新たな山を築いていく様子を眺め見ながら、私は頬に片手を当ててのんびり呟いた。
雨風を凌げるだけでも万々歳と思っていたけれど、この様子だと本当に凌げるかは非常に怪しいところねー。
とはいえ、しばらく厄介になる場所なのだから大切にしないと。この場所を提供してくれた学園長先生に感謝こそすれ、文句を言う筋合いはないのだから。
言える立場でもないものねぇ。
本来なら私もグリムちゃんみたいに叩き出されて、今頃どこかもわからない路地裏で膝を抱えていたかもしれないのだ。
そのことを思えば、少しでも前向きにこの寮も、現実も受け入れるべきだった。
……そういえば、グリムちゃんは大丈夫かな。
首輪はちゃんと外れたのかしら―。
どこかで元気にしているといいのだけれど……。
そんなことを取り留めもなく考えながら、掃除道具を探す。
まずはお部屋のお掃除をして、寝られる場所だけでも確保しないとねー。
箒はどこかしらー?
ひとまず目についた棚を確かめようと足を踏み出した――瞬間、バキリという音と共にまた床が抜けて、派手に転倒した。
お掃除ひとつするにも前途多難ねー……。